2025.6.15
お米の値上がりと治水の話。水田とまちづくりの意外なつながり
こんにちは。仲条です。
最近、「お米が高くなったな」と感じる方も多いと思います。ニュースでは、天候不順や生産者の減少が原因だと言われていますが、実はもう少し広い視点で見てみると、お米の話は「まちづくり」や「治水=水害対策」にも深く関わってきます。
今日はそんな話を、不動産屋の視点から少しご紹介したいと思います。
水田って、実は“天然の調整池”
三重県のように自然の多い地域では、水田が身近な風景ですよね。でも実はこの水田、ただお米を育てるだけじゃなく、【雨水をためてゆっくり流す「農地兼調整池」】として、とても重要な働きをしています。
水田があるおかげで、大雨が降っても一気に水が流れず、地域全体の排水負担が軽くなっているんです。
ところが、宅地開発が進んで水田が減ると、その調整機能も失われていきます。アスファルトやコンクリートに覆われた土地は水をためることができません。つまり、水田がなくなると、地域の“水の逃げ場”がどんどん減っていくということなんです。
開発には「調整池」が必要。でも実はひと苦労
では、水田の代わりに人工の「調整池」をつくればいいじゃないか、と思われるかもしれません。
実際、宅地開発をする際には、一定の面積を超えると調整池の設置が義務づけられています。たとえば伊勢市でもそうです。
ただしこの調整池、開発業者が自費でつくらなければならない上に、完成したら市に寄付しなければなりません。公園や道路も同じで、開発者側の負担はなかなか大きいです。(公園についても言いたいことはありますが、別稿で)
だから、多くの業者さんは「調整池をつくらなくてもいいギリギリの面積」で分筆(区割り)して、小規模開発を繰り返す傾向にあります。そうすれば費用がかからず、利益も残るからです。
でもこれが続くと、地域全体で見れば治水の仕組みが不十分な開発が増えてしまい、将来的に水害リスクが高まるという問題が出てくるんです。
自治体も調整池づくりを一緒に担ってほしい
ここで提案したいのが、調整池の整備に対して自治体も一部出資する仕組みです。
「財源が~」と言われそうですが、農地が宅地になると固定資産税はグッと上がります。増えた税収の一部を調整池などの治水インフラに回して、地域全体の安全を一緒に守っていくというのは合理的だと思います。
事業者がまちをつくり、自治体がインフラの持続性を支える。そうした官民の協力体制があれば、無理のない開発ができて、安心して暮らせる地域づくりにもつながっていくはずです。
最後に
お米の価格が上がる背景には、水田をはじめとする農地が減っているという現実があります。でもその農地は、単なる食料の生産地ではなく、地域の安全や環境にとっても大切な役割を果たしてきました。
私たちの仕事は、「ただ分譲地を提供すること」ではなく、「どうやってまちと自然を共存させていくか」を考えることだと思っています。
これからも伊勢市や三重県の風景を守りつつ、安心できる暮らしを支える仕事をしていきたいと考えています。